『精霊の守り人』
の著者、上橋菜穂子さんのエッセイ物語ること、生きること』(講談社文庫)にもボーダー(境界線)に関する記述があったので、一部ご紹介しますね。 まさにタイムリーな話題! 

壁の向こう側に広がっているのは<フロンティア>です。
<フロンティア>という言葉は、日本では「開拓」と訳しますが、じつは「フロント」、最前線という言葉からきているのです。

 (中略)

境界線の向こう側には、まだ見ぬ地がある。
もしかしたら、「生きる」ということ、それ自体が、フロント=最前線に立つことなのかもしれない、と思ったりします。それぞれの生い立ちや境遇や、すごくいろんなものを抱えて、私たちは、いま、出会っている。誰もが自分の命の最前線に立っているのなら、それぞれに境界線を揺らす力、境界線の向こう側に超えてゆく力を持っているんじゃないか。

相手を否定したり、恐れたり、あるいは自分の領分を守るために境界線を強くするのではなく、境界線を超えて交わっていこうとする気持ちを持てたら、どんなにいいだろう。

私は、それを、子どものころからずっと願いつづけてきたように思うのです。
そして、私の好きな物語に、もし共通点のようなものがあるとしたら、それは背景の異なる者同士がいかにして境界線を超えていくかを描いているところかもしれません。