ドキュメンタリー映画『マイルス・デイヴィス  クールの誕生』を観てきました🚶‍♂️

miles














公式サイト

モダン・ジャズの帝王と称されるマイルス。

モード・ジャズ、即興、クロスオーバー(ジャンルの垣根を超えて音楽性を融合させるスタイル)など、様々なキーワードで語られる偉大なジャズマン🎺ですが...

 マイルス本人「(俺の)音楽を聴けばわかる」

はい、その通りでございます🙇‍♀️ どんな形容も陳腐に感じる💦

様々なアーティストを追いかけていて思うのですが、"本物"のアーティストは

 「いかに独創的な音楽(アート作品)を作るか」

ぐらいしか考えてないのではないでしょうか。
表現の幅を広げるためにコラボレーションがあり、ジャンルの越境・融合がある。

分類や意味づけして分析する(時にレッテルを貼る)のは聴き手側が行うもので、演者はジャンルなどあまり意識せず、ピュアに音楽性を追求しているだけのように思います。

(注)アーティストの認知度を上げるため、また聴き手を導くためにキュレーター的存在も必要と思われます。

(ご参考)ジャンル、境界線についてのコメント👇

キース・リチャーズが語るアメリカと人種差別 他
「何でも型にはめたがる人のためにこういう言葉はあるのだろう。境界線は、アーティストではなく聴き手のために作られたものだと思う」

音楽ジャンルと黒人差別
「ジャンルの分類は白人側の事情で行われてきた。
分類するのはいつも白人が所有する組織であり、あるいは白人リスナーの関心を惹くために行われてきた」

・ 
猪子寿之× 石川善樹「人は概念を通じて世界を見ている」
「概念ができた瞬間、これまでの境界がとける。概念を作っている人の勝ち」


マイルスこそ既成概念の枠を破って度々スタイルを変え、ジャズに革新をもたらしたアーティストですが(陳腐な表現💦)、本人はあくまで淡々と、でも内なる創造の炎🔥を燃やしながら前進していっただけなのだろうな、とこの映画を観て思いました。枠にはめられてたまるか❗️という反骨精神があったのではないかな。

映画は、関係者の証言をもとに、マイルスの65年の生涯をアーカイブ映像でたどる2時間弱のドキュメンタリー。アーティスト活動以外に、当時 成功をおさめた多くのアフリカ系ミュージシャンが経験したであろう人種差別、人種に寛容なパリでの公演・交遊、ドラッグ依存、苦悩、孤独についてもスポットを当てています。ただ、駆け足で進行していくので、苦悩の原因が今一つわからなかった...。あとは自分で調べろってことね🤓💦


印象に残ったシーンを3つほど。

*メモを取ったわけではないので、コメントが間違ってたらスミマセン💦

1. 第二期クインテット

マイルスは様々なアーティストと共演していますが、チャーリー・パーカー、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーンは別格なので脇に置いておくとして、1960年代に入って若手を起用した第二期クインテットハービー・ハンコック (pf)、ウェイン・ショーター (sax)、ロン・カーター (ba)、トニー・ウィリアムズ (dr) )の演奏シーンが見ものでした。
 
もう、メンバーはみんな必死 💦 ハービーなんて、再生速度を✖️1.3倍にしたくらいピアノ🎹を早弾きし、熱のこもった演奏をしています。

映像ありました👇

The Miles Davis Quintet - Germany 1967-11-07






 マイルス「それなりのミュージシャンなら、こちらが求める以上の演奏をする」

マイルスの高い要求水準に応えるために、毎回 真剣勝負だったことでしょう🔥🔥🔥

ハービー曰く「マイルスでクールなところは、何をすべきか具体的に指示しなかったことだね。ただ俺達が自分の楽器を使って、何をすべきかわかるように促した。俺達が解決策を探す道筋を示してくれたのさ。」ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィスとプリンスを語る より)

   具体的に指示がない...

こわっ😱💦  主に即興演奏だろうから、当然無茶ぶりもあるわけで...。演奏が抜群に上手くて、アドリブができるのは当たり前。あとはアーティストがよく口にする  "フィーリングが合う" かどうかなのでしょうね。


当のマイルスも若い頃にディジー・ガレスピーと共演した時は、「ついて行くのがやっとだった」(字幕。実際には「最も一緒に演奏しがいのある人だった」 とコメントしています👇 

Miles Davis & Marcus Miller, Fun Talk
晩年は若干イロモノ化していた印象が...




2. 死刑台のエレベーター

マイルスの名を一躍世に知らしめた、鬼才ルイ・マル監督『死刑台のエレベーター』(1958年公開) での演奏録音シーン。ラッシュ・フィルムを見ながら即興演奏をしていたとは知らず、学生時代にフランス映画を観まくった自分には鳥肌モノでした。

映像ありました👇

Miles Davis - Working with Louis Malle 
恋人を探して、パリの街をさまようジャンヌ・モローにあわせて演奏するマイルス(大画面で観るとたまりません...)


即興だったとは...

(余 談)
パリ🇫🇷とマイルスと言えば、、
2018年7月に観たミシェル・ルグランのブルーノート東京公演で一番感動したのが、二人が共作・共演したThe Dream『Dingo』のサントラ収録曲)を演奏した時でした。
ルグランがピアノ🎹を弾きながらトランペットのパートをスキャットで歌うと、マイルスがその場に降りてきて演奏している🎺✨ような感覚に陥り、「マイルス、今ここにいるな」と確かに本人の気配を感じたのです。夢のような瞬間でした...

ライブレビューより引用)
中盤では映画『Dingo』からのナンバーが紹介されました。この作品には最晩年のマイルスが"伝説のトランぺッター役"として登場し、演技をしています。そしてサウンドトラックはルグランとマイルスが全面的に組んで制作されました。ルグランはマイルスの思い出を語ったあと、「Dingo Lament(原曲は「The Dream」)」「Dingo Rock」をプレイ。


『Dingo』の予告編
"Did you like the music?" (坊や、俺の音楽好きかい?)
"It was the best thing I'd ever heard."(これまで聴いた中で最高だよ)
サントラにもこのセリフ入ってる




3. プリンスとマイルス


映画の終盤に出てきた

  Paisley Park, 12/31 in 1987 プリンスとの共演シーン

Pri















関係者が「出会うべくして出会った二人」とコメントしていましたが、どういう意味なんだろう? と。革新者どうしの共演というのはわかりますが、今ひとつピンとこない...


後日思ったのは、プリンスにとってマイルスはロールモデル(具体的な行動や考え方の規範となる人物)だったのではないかということ。
まず、マイルスのサウンドに魅せられたのが一番でしょうが、二人には以下のような共通点が見られます。

 ・ アメリカ中西部育ち(マイルスはイリノイ州生まれ→ミズーリ州セントルイス育ち)
 ・ 両親が離婚
 ・ 人種差別に批判的で、白人を積極的に登用プリンスは異性も登用)
 ・ 自分だけを信じ、他人に心を許さないプリンスは最後まで人を信じようとした)
 ・ 多くを語らず、感情は音楽に込める
 ・ スタイルを度々変えながら、未知の領域を切り開くファイター(マイルスはボクシングをするファイター🥊でもあった)

先駆者のマイルスに自分を重ね合わせて、手本にしたのではないかな。
逆もしかり。マイルスもプリンスから大いに刺激を受けたようで、コロンビアからワーナーに移籍したのはプリンスの影響もあったのでしょうね(確認していません💦)?  ワーナー移籍後にリリースした『TUTU』はプリンスが共同プロデュースを行う予定でしたが、最終的にはマーカス・ミラーがプロデュースを務めたそうです(Wikipedia参照)。

 →  2020年9月にリリースされた『Sign O' The Times(Super Deluxe Edition)』「Can I Play With U?(feat. Miles Davis)」 が収録されています。もともとはプリンスが『TUTU』に提供しようとした曲だったとのこと。


(ご参考)

New!  「Can I Play With U?」他  長文です....
https://jazztimes.com/features/profiles/the-ballad-of-miles-davis-and-prince

 
  Podcast The Story of Sign O' The TImes, Episode 8:  Can I Play With U ?
  音声&文字起こしあり。アトランタ・ブリス登場
 
   プリンスとジャズが邂逅、マイルス・デイヴィスとの共演

 365 Prince Songs In A Year: When Prince Asked Miles Davis To Play With Him 
    * DeepL翻訳でいけます

   365 Prince Songs In A Year: Power Fantastic

 Inside Miles Davis' Prince Obsession, As Detailed by Davis' Family and Collaborators
    「プリンスはマイルスを自分の音楽ヒーローだと感じ、マイルスはプリンスの中に自分自身を見た」 

俺の欲しい音わかるよな?」と脅かして作らせた音楽 - Miles Davis『TUTU』
  プリンスのアルバム・レビューでおなじみのブロガーの方。わかりやすくて、面白い

     Sign O' The Times (Super Deluxe Edition)「Power Fantastic」 アトランタ・ブリス🎺

     プリンスの回顧録 → コミュニティのハンドブック
 マイルス・デイヴィスの自伝を読んでいたようですね。テラス・マーティンも子供の頃読んだらしい。アフリカ系ミュージシャンの定番本なのだろうか...
 
  回顧録THE BEAUTIFUL ONES』 原書 233ページ
  2016年1月 Piano & A MicrophoneコンサートでのMC
(意訳)
プリンス「リサ・コールマンと初めて会った時、フリースタイルでピアノを弾いてたんだけど、これまで聴いたことのない "クレイジーなコード進行” だった。後にマイルスが家に遊びに来て似たようなコード進行で演奏するまではね。リサの好きなピアニストはビル・エヴァンスだった(マイルスが起用)。」
   → リサによると、プリンスはすぐさまギターを取りに行き応戦。「音楽的な繋がりを感じた」とリサ


2006年 ロックの殿堂入り。プレゼンターはハービー・ハンコック
(2017年 ロックの殿堂ジャパンミュージアム in 有楽町 で展示していた写真)
マイルスロック

























本作では、マイルスの濃い人生がコンパクトにまとめられており、マイルスやジャズに詳しくない自分には色々と発見がありまた。Netflixでも配信しているので、興味のある方はぜひ!

マイルスの "ターニング・ポイント" になったアルバム『Kind of Blue』から半世紀、56年経ってからの『To Pimp A Butterfly』。感慨深いです...


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(関連記事)

 マイルス・デイヴィスってどんな人?
    現役ジャズトランペット奏者が解説。自伝からの引用あり
 
・ ミシェル・ルグランとマイルス
  フランスのエスプリ🇫🇷が効いた軽快なルグラン・ジャズ🎵
 『ロシュフォールの恋人たち』は超名盤✨

マイルス・デイヴィス in 『小説家を見つけたら』サントラ
 ショーン・コネリー & ハル・ウィルナー(プロデューサー)RIP 🙏
 * プレイリストを追加しました。選曲のセンスの良さにうなる...

BIRD 
 ジャズ・マニアであるクリント・イーストウッド監督が、チャーリー・パーカーの生涯を描いた映画。人種差別、欧州巡業、ドラッグ中毒、苦悩、病気...。サントラも要チェック。
ペイズリーパークの編集室に、この映画のポスターが飾ってありました。