村上春樹著意味がなければスイングはないでビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンについて書かれており、プリンスと重なる部分が多く、大変興味深く読んだので、一昨年公開された伝記映画ラブ&マーシー 終わらないメロディーを観ました。

ビーチ・ボーイズはお気楽なカリフォルニアのビーチ・ソングという印象しかなく、歴史的名盤と言われるペット・サウンズを聴いたのは大人になってからだったので、ブライアン・ウィルソンは天才だ、天才だと言われても、いまいちピンとこなかったのですが、、
まず、ブライアン・ウィルソンがこんな苦労をしていたなんて知らなかった!!

天才ゆえの孤独・苦悩、周囲の無理解、レコード会社との確執、父親の精神的且つ肉体的暴力、そして精神崩壊、長期にわたる引きこもり生活、洗脳、やがて解放、復帰 ...

スタジオにこもって創作するシーンが度々出てきますが、ああ、やはり天才とはこういう人のことを言うのだな、、と思いました。
音楽が頭の中で鳴るんですね。考えて曲作りするのではなく、頭の中で鳴ってそれを楽曲に落とし込んでいく。スタジオ・ミュージシャンに細かく指示していくシーンも興味深かった。なんでわかるんだろう?と凡人は不思議に思うのですが、わかるんですね、天才には。頭の中で完璧に楽曲のイメージが出来上がっているから。

(ご参考)

町山智浩 映画『ラブ&マーシー  終わらないメロディー』を語る
 〜 miyearnZZ Labo
(一部引用) 
この映画ですごく面白かったのは、『天才っていうのは考えないんだな』っていうことがよくわかったんですよ。『こういう風にしよう』とかいろいろ考えてやってないんですよ。音楽がどんどんどんどん頭の中にあふれてくるんですよ。で、眠れないの。メロディーとか出てきちゃって。で、ぜんぜん楽しくないんですよ。もう眠れなくて、気が狂いそうになってるんですよ。寝ている間もどんどんどんどんメロディーが出てきて。サウンドが出てきて。で、しょうがないから吐き出すんですよ。それが天才なんだな!っていうのが、よくわかりましたね。
こんな人になれたらいいんだけど、まあ、人生大変ですね。はい。まあ、凡才の方が楽だなと思いましたよ。一生懸命、ひねり出しゃあいいんだもん。でも、出てきちゃう人っていうのはもう、頭が破裂しそうになるんですね。


『ペット・サウンズ』がビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』より先にリリースされたとは知りませんでした。しかも、ビートルズが影響を受けて一部パクったとは 

(『意味がなければスイングはない』村上春樹著 より一部引用)
ブライアン・ウィルソンの作業はどこまでも孤独だった。ブライアンはバンドにおけるほとんど唯一の頭脳であり、発電機だった。彼は一人ぼっちで、誰の助けも借りず、自らの内的な世界をどこまでも掘り下げていかなくてはならなかったし、おかげで作業はより個人的なものに、より難解なものに、ある場合にはまわりの世界と時間性をいくぶん異にしたものにならざるを得なかった。僕にとってみれば、いやおそらくほかの誰にとっても、『ペット・サウンズ』は『サージェント・ペパーズ』よりもはるかに難解な音楽だった。


長いブランクを経てブライアンが個人名義でリリースしたSMILEは、当時日本の洋楽界でも大きな話題となり、私はこのアルバムを聴いてはじめて、なるほど、ブライアン・ウィルソンは凄い!✨とわかったのですが... こんな苦労があったとは。

ちなみに、来日公演では『SMILE』のアルバムを完全に再現。ずらっとミュージシャンが並んで、いろんな楽器を演奏する様子は壮観でしたね。そんなの観たことなかったから。コーラスのハーモニーも素晴らしかった。

ハーモニーと言えば、、
話は脱線しますが、ケンドリック・ラマーのアルバム『To Pimp A Butterfly』の楽曲に美しくて爽やかなハーモニーのコーラスが度々出てきて、最初に聴いたときはビーチボーイズかっ!とビックリしました。ヒップホップにビーチボーイズ風のハーモニー?ワケわかんない、と。サンダーキャットのコーラスだったのですが  そのセンスにうなりましたね。


映画のタイトルになっている" Love and Mercy(愛と慈悲を)"は、ブライアンが長いブランクのあとにリリースした曲のタイトルからきています。

(『意味がなければスイングはない』村上春樹著 より一部引用)
彼はこの曲(Love and Mercy)を歌うことによって、死者たちを鎮魂し、彼自身の失われた歳月を静かにとむらっているように見える。裏切ったものたちを許し、すべての運命をあるがままに受け入れているように見える。怒りや、暴力や、破壊や、絶望を、すべてのネガティブな思いを、懸命にどこかに押しやろうとしている。その切実な思いが、我々の心にまっすぐ届いてくる。
 
  * 注)ブライアンはビーチボーイズのメンバーでもある2人の弟を不慮の事故で亡くしている

『ペット・サウンズ』を改めてじっくり聴いてみようと思います!!

ブライアンのオチ:サーフィンの曲を歌っていたのに、海が怖くて、サーフィンをしたことがなかった。チャンチャン♪ まぁ、現実はそんなものですよね

アルバムのジャケット。SMAPがもろパクってた
Pet Sounds



















ビーチ・ボーイズ史上一番ヒットした『グッド・バイブレーション』
素晴らしいメロディとハーモニー、曲の転調、独特な楽器使い(テルミン)など、実験的なサウンド✨


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「SMILE」by ブライアン・ウィルソン